地域研究としては不十分
現代シンガポールの諸問題について、おもに多人種統合の観点から論じたもの。読み口としては、一般向けであるが、学術的レベルも保持している。各論の部分では、住宅政策、言語政策等について述べられているが、その論調は基本的に他のシンガポールの同様のテーマを扱ったものとはかわりがなく、著者のオリジナリティが感じられない。もっとも、1959年のCitizenship Ordinanceは、シンガポールの国民統合の出発点としてかなり重要な物であるということは理解できる。 ただ、本書は、概説的であり、ひとつの事象について実証的に詳細に明らかにしたわけでもなく、また分析視角も多分に「ポストコロニアル」系になってしまっているのは、地域研究者としては極めて問題があるだろう。 そういった表面的・抽象的議論と一切関係なく、シンガポールがそれ自身として行ってきた政策や現実を明らかにするのが、地域研究者の使命ではないのだろうか。
三修社
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